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最高裁判所第一小法廷 昭和31年(オ)623号 判決 1958年7月03日

主文

原判決を破棄する。

本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人弁護士高野篤信の上告理由第二点について。

原判決は、「ここに附加すべきは、被控訴人石田重雄が換地上のどの部分に何坪について借地権を有するかの点である。同被控訴人は、旧地上の建物敷地約二五坪について新所有権者に対抗し得る賃借権を有していたところ、前認定のごとく同人は自己の賃借地の一部が残存している換地予定地上(旧借地と換地予定地とは重なり合う部分がある)にそのまま建物を移動し、現在換地予定地上約一七坪を占拠するものであつて、旧借地と比較して格別の異動がなく、換地予定地全般から見ても場所的、坪数において旧借地当時より特別の利益を得たとも見られないから、同場所に賃借権を認めても差支がないばかりでなく、第一審原告代理人は同被控訴人が現在換地予定地上に占拠する場所並びに坪数について争わない以上、同被控訴人は現在換地予定地上に建物を所有して占拠している約一七坪について借地権を有すると認めるを妥当とする」旨判示して、旧地約二五坪に借地権を有していた被上告人は、換地予定地上約一七坪について当然借地権を有していると判断したことは、所論のとおりである。しかし、所論土地区劃整理法九八条によれば(本件の土地区画整理は、特別都市計画法に基いて施行されたものであるが、土地区画整理法施行後は、同法施行法五条により、新法三条四項の土地区画整理事業となつたものと認められる)、施行者は、仮換地指定の場合において、従前の宅地について賃借権その他の宅地を使用する権利を有する者があるときは、その仮換地について仮にその権利の目的となるべき宅地又はその部分を指定しなければならないものであつて、同法八五条によれば、権利者は、区画整理施行期間中は、施行規定で特に受理しないことと定められている期間を除き、何時でも施行者に対し権利の申告をなしうるものであるから、本件のように従前の宅地の一部について賃借権を有するに過ぎないような場合には、仮換地について先ず施行者の指定がない限り、権利者は当然には仮換地について権利を有するものではないと解するを相当とする。されば、原判決は爾余の点について判断するまでもなく、すでにこの点において違法であつて、この違法は、原判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、論旨は、その理由があつて、原判決は、破棄を免れない。

よつて、爾余の論点について、判断を省略し、民訴四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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